私自身も、七五三や十三参りなど特別な機会に、祖母が拵えた豪奢な着物を着せられた「着心地の悪い」思い出しかなく、自分が大人になってもこのような着にくいものを、わざわざ高いお金を出してまで着ることはないだろう…と考えていました。

ところが、京都で発見した「古着物」の世界はお財布に負担ではありませんでした。また、綿やウールなどの着やすい生地を選んでいるので、次々にアレンジの楽しみなどが生まれてきたのです。

私は、一人で有名な東寺の骨董市に出かけることにしました。肌寒い日でしたので、お気に入りのウールの着物を着ていったのです。

会場には、私同様カジュアルな着物を身に着けた若い女性がたくさんいました。

広大な領域を無数の骨董商・古着商のブースが埋め、私は掘り出し物の着物や帯を探して宝探し気分でいました。ところが、あるブースで絣の着物を手にしていた時です。

隣で物色していた中年女性が、「お姉ちゃん!ちょっと!」と私の腕を引っ張りました。「自分で気がついてないの?後ろが大変だよ!」見ると、後身頃の中心ー背縫いの部分ですーが、ちょうど膝の後ろのあたりまで、ぱっくりと割れてしまっていたのでした。

私はパニックに陥り、大慌てでコンビニを探しました。ですが境内は広大で、外に出るまでも遠ければ、土産店ばかりで肝心のコンビニもまた見つからないのです。

長い時間が経ってようやく入った店で、私は安全ピンを購入してトイレを借り、その中で半泣きになって裂けてしまった部分をつなぎ合わせたのでした。

足が露出したのは膝の後ろまでで、これは普段履いている丈のスカートと変わりはありません。

ただ、着物を着ている状態でここまで「露出してしまう」という事態がみっともなくて、私はがっくりと落ち込んだまま帰路につきました。

これは私がたまたま不運だっただけですが、やはり着慣れないものを着ていると、受けるショックやダメージもまた変わってきます。

それ以降も着物でのトラブルを多々経験しましたが、この時の落ち込みほど印象に残っているものはありません。苦い体験談でした。

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